大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)332号 判決 1957年3月08日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告理由第一点について。

相殺の意思表示は双方の債務が互に相殺をなすに適したる始めに遡つてその効力を生ずることは、民法五〇六条二項の規定するところであるが、この遡及効は相殺の債権債務それ自体に対してであつて、相殺の意思表示以前既に有効になされた契約解除の効力には何らの影響を与えるものではないと解するを相当とする。そしてこの事は相殺の自働債権者がその債権を有しておることを知らなかつたため相殺の時期を失した場合と雖も右の理を異にするものとは解せられないから、論旨は到底採用に値しない。

上告理由第二点について。

原審の認定した事実関係の下においては、本件被上告人のした解除権の行使をもつて権利の濫用とは到底解することができない。論旨は採用し難い。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例